■ クーロン力
ひとまず電場を離れ、荷電粒子同士の間に働く力について考えてみよう。荷電粒子の大きさは無視できるほど小さいとする。このようなモデルは点電荷と呼ばれる。同種の電気に帯電した粒子の間には斥力が働き、逆に異種の電気に帯電した粒子の間には引力が働く(図1-3)。この荷電粒子間の静電気力の事をクーロン力と言う。
【図1-3】

▲クーロン力(矢印)の様子。赤が正電荷、青は負電荷。 |
ペアの粒子が受けるクーロン力の大きさは互いに等しく、向きは反対である。これは反作用を考えると自明である。このクーロン力の大きさは、各粒子の持つ電気量をそれぞれ
q1 及び q2 、粒子間の距離を r として次のように与えられる:
(1-6)
符号は斥力の方向を正に取る。つまり値が負の場合は引力となる。この法則はクーロンの法則と呼ばれており、法則の名は発見者のクーロンにちなんだものであるが、実はクーロンがこの法則を見出すよりも前にキャベンディッシュが発見していた。しかしキャベンディッシュはその成果を発表しなかった為、クーロンの成果となったのである。なお、1-6式におけるε0は真空の誘電率と呼ばれる定数である。
1-6式から荷電粒子間に働く静電気力は、中心力であり、加えて互いの距離の逆二乗に比例することがわかる。このような力を逆二乗力と言う。クーロン力について最も興味深い点は、この逆二乗力という性質である。この事実が静電気にいくつかの面白い性質を生み出しているのだが、それについてはまた後で触れる事にする。
二つの荷電粒子にあらためて名前を付けよう。粒子1は電荷 q1 を持ち、粒子2は電荷 q2 を持つとする。クーロン力は引力もしくは斥力であるから、力の向きは粒子1及び粒子2を通る直線上にある。従って1-6式と粒子の位置関係から、粒子1の受けるクーロン力
F1 を次のようにベクトルで書くことができる:
(1-7)
ここで e12 は粒子2から粒子1を見る方向の単位ベクトルである(図1-4)。
【図1-4】

▲F1、F2 及び e12 |
式1-7は本質を捉えた理解しやすい形であるが、これを粒子1、粒子2の位置ベクトルで表したいと思うかもしれない。粒子1、粒子2の位置ベクトルをそれぞれ r1、r2 とすれば(図1-5)、 e12 は:
(1-8)
従って1-7式は以下のようにも書ける:
(1-9)
(1-10)
【図1-5】

▲ r1、r2 、r1-r2 |
■ 点電荷の作る電場
さて、クーロン力は一体何が及ぼしている力だろうか。片方の電荷が、空間を隔てて伝わる遠隔的な力により、もう片方の電荷を直接的に押しているのだろうか。このような考えを遠隔作用論と言うが、かつてはこれが有力な考え方であった。つまり静電気力は遠隔作用論で説明されていた。
しかし、現代ではこれを電場によるものであると解釈する。つまり電荷が電場を作り、その電場が電荷に力を及ぼすと考えるのである。このような考え方によると、クーロン力は電荷同士が遠隔力によって押し合うのでは無く、電場と言う間接的な存在を介して伝えられることになる。電場は空間をもれなく満たしており、無論電荷も電場中に置かれている事になるから、電荷は近接している電場から力を受けると見なせる。遠隔力とは対象的なこのような考え方は近接作用論と呼ばれる。現代物理学が近接作用論を採用している理由は、一つは計算上の利便性といった点からであり、もう一つは電場の実在が既に十分確かめられているからである。
さて、原点に置かれた q [C] の点電荷が周囲に作る電場を求めてみよう。これには
r の位置に置かれた 1[C] の試電荷が受けるクーロン力を求めれば良いから、1-7式より
(1-11)
er は原点から r の位置を見る方向の単位ベクトル、 r は r の絶対値である。また、1-9式から次のようにも書ける:
(1-12)
点電荷が原点ではなく rq にある場合は、r に r - rq を、r に | r - rq | を入れればよい。(図1-6)
(1-13)
【図1-6】

▲ 点電荷qの作る電場の様子 |
図1-6の通り、点電荷の作る電場は放射状であり、球対象であると言える。この結果は素直に想像と一致するであろう。点電荷が帯電球の場合にも電場は球対象になる。また帯電棒の場合は軸対象になる。このように、静電場における電場ベクトルの向きは、帯電体形状の幾何学的対象性から容易に予測できる、素直な方向を向いている。そこで未知の電場ベクトルを求める際、電場ベクトルの向きをあらかじめ予測して仮定しておくと、普通に解くよりも計算がずっと簡単になる事がある。(このような予測はしばしば物理的推察と呼ばれる。一見インチキ臭いが、強力な手段である。)