■ 重ね合わせの原理
点電荷が複数存在する、つまり電荷群を作っている場合の電場はどうなるであろうか(図1-7)。この時の電場ベクトルは、電荷群を構成している電荷達が、それぞれ単体で存在している場合における電場ベクトルの総和で与えられる:
(1-14)
【図1-7】
▲ 電荷群 |
これを重ね合わせの原理と言う。但し、電荷群を構成している電荷に働く力を求めたい場合 ― 例えば電荷群の
j 番目の電荷 qj が受ける力 Fj を求めたい場合は、上の E を用いてそのまま Fj = qjE とする事はできない。と言うのも、電荷は自身の作る電場からは力を受けない(*)からである。従ってこの場合のFj は自身の影響を除いて:
(1-15)
となる。
■ 帯電体の作る電場
これまでは話を点電荷に限ってきたが、クーロンの法則と重ね合わせの原理から、大きさを持った帯電体の作る電場の様子を知ることが出来る。
力学において対象を質点から剛体へ発展させる際、体積あたりの質量の係数として密度を用いたが、これと同様、帯電体は体積(面積)あたりの電荷の係数、つまり電荷密度(ρと書く)を持つ存在である。一般に電荷密度は場所によって異なる関数である。この帯電体全体が
r の位置に作る電場を求めるには、帯電体を無数の微小体積(面積)に分け、その全てが
r に作る電場を重ね合わせれば良いであろう。(図1-8)
【図1-8】

▲ dV' は r' にある微小体積区間 |
微小体積を十分小さく切り分ければ、r'の位置にある一つの微小体積 dV' (電荷ρdV')の作る電場 dE は1-13式より:
(1-16)
従って帯電体全体の作る電場はこれを重ね合わせて:
(1-17)
積分範囲の V は帯電体の体積区間であり、つまり「帯電体内に含まれる全ての範囲内の
dV' について足し合わせよ」という意味である。
実際の計算では各成分に分けて計算する。例えばデカルト座標なら:
として

(1-18; y, z成分も同様)
これを x'、y'、z'で次々に積分して行けば良い。なお、∫∫∫は三重積分である事を強調する為の表記である。
ところで、1-18式は見ての通りかなり面倒臭そうな計算であり、実際に問題を手で解く際には可能な限り使用を避けたい式でもある。多くの問題では、対称性を考慮したり電位を考えたりなどして、1-18式をそのまま用いるよりも容易に解けるアプローチを探すものである。しかしながら、1-18式はとりあえず「電荷の分布が与えられれば、静電場の問題を必ず解く事が出来る」という事実を示している点が重要なのである。
ところで、1-17の表記をやや抽象的過ぎると感じるかもしれない ― なぜ V
やら dV やら書くのだろう。最初から面倒がらずに、帯電体の区間をしっかり座標上で定義しておけば、そのまま積分できるのに
― といったように。確かに使う上では1-17より1-18の方がずっと易しい。だから最初からこれで書けば良いと思うかもしれない。しかし、1-18式はデカルト座標のみで成り立つ法則である。従って他にもそれぞれの座標型における法則の形を変換によっていくつも用意しなければならない。
それに対して1-17式はどうだろう。これも変換は要るが、どのような座標上でも意味は一目で通る。つまり1-17式は、座標系のとり方によらない普遍的な表記なのである。
我々が「物理」として求めるのは数式そのものでは無く、数式に表された“自然の意味”である。従って物理法則の表記として、より本質を捉えているのは、1-17式のように普遍的な意味を最も簡潔に表している式の方では無いであろうか。