■ 電場ベクトルとその例え
前項までは「電場がある時に、試電荷が受ける力」といったように、電場について間接的な概念を通して論じてきた。従って電場そのものについて十分に論じてはこなかったし、力を求める上で定義式以上に拡げて議論する必要も無かった。しかしここから先の話は、電場そのものを考察の対象としていく。つまり電場を試電荷の概念と一旦切り離し、他に何も無くともただそこに存在しているものとして考えていかなければならない。
ところが、我々にとって電場というものは、今のところ数学的な「ベクトル場」でしかない。これをそのままイメージするにはあまりに抽象的過ぎやしないだろうか。実際、目に見えない電場を他の何かで例えようという試みは、ある種の慣習として昔からなされてきた。それはある時は矢印であり、ある時は何かの流れであり、またある時は特殊な曲線の束であったりもする。そして私達はそのような例えを駆使して電場の性質をざっとかじり終えた後、「電場って結局何だったのだろう」という謎を残すのである。その答えとして、結局戻ってくるべきものはやはり抽象的なベクトル場であろう。上に述べた例えはあくまで例えに過ぎないのであり、電場をイメージする助けにはなるが、どれも電場を完璧に表現出来るものは無い。どの例えも突き詰めれば不都合な点が出てきて、電場というものを完全に記述しようと思うと、やはりベクトル場による記述を置いて他には無いのである。
さて、上のような点を踏まえた上で、ここから暫くの間電場を別のものに例えたい。そうする事が、(それが例えであるという事を忘れさえしなければ)電場の性質に対し直感的な理解を得る助けになると思われるからである。