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力 学
- Mechanics -

第一章 力学の基礎

1-2 力学3原理








 


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   1-2 運動の3原理(ニュートンの運動3法則)



 古典力学は以下に示す3つの法則を根本原理として成り立っている。これらは全てニュートンが自らの著書「プリンキピア」において示したものである。


■ 運動第1法則(慣性の法則)


 「力を受けない物体は、
  静止したままか等速直線運動を持続する。」

 一般に、「力を受けない物体が静止 or 等速直線運動を持続」する様子が観測できる座標系、すなわち上記の運動第1法則(慣性の法則)が成り立つ座標系を「慣性系」と呼ぶ。

 運動第1法則は、一見したところでは後述の運動第2法則(運動の法則、ニュートンの運動方程式)に包含されるように見える。確かにニュートンの運動方程式において F = 0 とすれば、質量は定数であるから加速度が 0 、つまり速度は一定となり、これより物体は静止か等速直線運動を行うと結論付けられる。しかし、もしこの第1法則(慣性の法則)が第2法則(ニュートンの運動方程式)に包含されるのならば、独立に列挙させる必要はない。敢えて分離して記述したのにはニュートン(あるいはニュートン力学の解釈者)の意図が反映されているのである。

 実は、この第1法則の真の意味は「慣性系の要請」(ニュートンの運動方程式を適用するための必要条件の提示・保証)である。すなわち、「この宇宙には少なくとも1個の慣性系が存在する。」という主張である。




■ 運動第2法則(運動の法則)

 「質量 m の物体に力 F が作用する場合、
  力の方向に加速度 a (=F/m) が生じる。」


 
或いは

 「質量 m の物体が加速度 a で運動している時は
  物体に力 F (=ma) はたらいている。」


 これを数学的手法の1つである微分方程式を用いて記述すると、

   

 
となる。これをニュートンの運動方程式という。

この方程式は一見すると質量と加速度の積が力になるという単純な式に見えてしまうが、その見方は誤りである。運動方程式のイコール(=)は因果関係を表すイコールであって数学的な力の定義を表しているわけではない。>> 力(古典力学)
 冒頭で確認したように、定義とは人間が恣意的に決めた数学的約束である一方で、運動方程式が示していることは、人間や人間の学問の関与に関わらない事実である。また、運動方程式は第1法則により、その適用を保証されている。





■ 運動第3法則(作用・反作用の法則)

 以下、


= i が j に及ぼす力

 とする。このとき、

 「質点 i が質点 j に力を及ぼすとき、質点 i は質点 j から、
  同じ大きさ・逆向きの力を受ける。」


 数式では


    


 これが作用・反作用の関係であるが、この関係は着目すべき物体が接触しているか否かに関わらず成り立っている。力のつりあいと勘違いしやすいが、全く別の性質である。
 更にこの第3法則は、単体系から多体系への議論拡張を可能にするのだけはなく、質点問題から剛体問題へ移行する際に重要な役割を果たすのである。






 
■ 地球上でニュートンの運動方程式を適用することの正当性

 ニュートンの運動方程式は慣性系でのみ立式可能である。もし、非慣性系(ある慣性系に対して加速度運動する座標系)で適用するならば、慣性力を導入しなければならない。

 地球上に固定された座標系を考えると、地球が回転運動をしていることから明らかに非慣性系であると分かる。(別章で述べるが、回転座標系においては「遠心力」と「コリオリの力」という2種類の慣性力が発生する。) したがって地球上で慣性力を導入しないでニュートンの運動方程式を立てるのは、基本的にご法度であることがわかる。


 しかしながら、遠心力やコリオリの力は、日常的なスケールの現象へは僅かな影響しか及ぼさないため、多くの場合では無視して運動方程式を立てることが可能なのである。



■ 「原理」か「法則」か

 ところで、ニュートンの運動法則はその証明不可能性から、本来は原理として見るべきものである。ここでまず、本題に入る前に「原理」「法則」「定義」に明確な意味を与えることにする。

「原理」 とは、何からも導出されない証明不可能なもの。特に、物理学においては自然現象から帰納された複数の法則を統一するものとして捉える。
「法則」 とは原理の上に展開されるもの、つまり原理によって説明されるもの。
「定義」 とは人間が恣意的に決めた数学的な約束。


 
したがって、表題にもあるように、証明不可能で、より上の階層の原理を持たないニュートンの運動3法則は「原理」として位置づけるのが妥当である。これらのニュートンの運動に関する3つの主張は、古典力学の範囲においては明らかに「原理」として位置づけることができる

 だが、量子論と並んで現代物理学の基礎であるアインシュタインの相対性理論の範疇では、ニュートン運動方程式が誤りであることが証明されている。すなわち、ニュートンの運動方程式に対して反証が挙げられたために、これは原理から降格することになる。先に述べたように、原理から降格した場合、それは「法則」として位置づけられるのであるが、ニュートン運動方程式の場合は少し事情が異なる。法則は「真」でなければならないのであるが、ニュートンの運動方程式は「偽」であると示されたのであるから、法則として位置づけるのにも抵抗があるのである。しかし、科学の主体である人間が感知しうるレベルでの動力学を説明するためには、ニュートンの主張は真であるとみなせる。つまり、ニュートンの運動方程式は、反証が挙げられているために原理ではないが、その上に立つ原理を持たず、特定の条件下で近似的に運動を記述できる点で、限りなく原理に近い近似的法則と言えるのだろう。

 但し、ニュートンの運動方程式は、現代においても非常に強力であって、決して過去の遺物ではないことに注意したい。 以降、特に必要な場合を除いて、ニュートンの力学に関する3つの主張は、慣習に習って「法則」と書くことにする。



<<参考文献>>

 ・ 山本義隆, 駿台文庫「新・物理入門 増補改訂版」 2004年初版

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