OPアンプでは出力端子が一本のものが一般的であるが、これは図1の両出力端子間の電位差が出力されると考えればよい。
入力端子である A1・A2 はそれぞれトランジスタ T1・T2 のベース電極であるから、電極(+)からそれぞれ T1・T2 のコレクタ-エミッタ間を通過して電極(−)へ向かう電流は、A1・A2 の電位によって左右される。 もし両者に差があれば、T1 のコレクタ-エミッタ間を通過する電流と T2 のそれは等しくならない為、抵抗 R1 と R2 を流れる電流にも差が生じる。 従って、R1 での電圧降下と R2 での電圧降下に差が生じ、これが出力端子 B1・B2 間の電位差として出力される。 具体的な例を以下に示す。
理解し易くするために R' は無視する。 また回路特性は差動増幅であるが、片方の入力電位を 0 にしておいた方が計算がシンプルに進むので、A2 入力端子をアースした場合で考えてみよう。 このとき、T2 が高性能なトランジスタであれば、回路の環状部右側には殆ど電流は流れない。 従って B2 出力端子の電位は電源(+)のものと等しい。
この状態で、A1 入力端子に電位 V1 が存在したとする。 回路環状左側の状態を図2に示した。
【図2】

▲B1の電位はA1の電位により決定される
T1の内部抵抗値をξ1とすると、T1 のベース-エミッタ間には V1 /ξ1 の電流が流れる(R' は無視)。 これを I1 と置くと、T1 のコレクタ-エミッタ間には α×I1 の電流が流れる。 α は T1 の電流増幅度である。 α×I1 を I'1 と置くと、抵抗 R1ではR1×I'1だけ電圧が降下するため、 B1の電位は電源(+)のものより R1×I'1 だけ低くなる。
ところで、B2 端子の電位は電源(+)の電位に等しかったから、R1×I'1 がこの例でのオペアンプの出力電圧となる。 R1×I'1をΔVと置くと、
(1)
となる。 A がこの回路単体での電圧増幅度である。この値をデシベル表記したものは裸電圧利得と呼ばれる。一般に A の値は10万倍程度と、極めて大きい。
ところで、電源電圧は有限値であるから、図2において V1 をある程度以上大きくしていっても、回路には
最大 I'1 = (電源端子間の電位差) / R1 (R'は無視)
以上の電流は流れないことが分る。従って出力電圧もこの時点の値で飽和値となる。
要するに、OPアンプでは駆動電源電圧以上の出力電圧を得ることは不可能である。
■フィードバック
フィードバックは、OPアンプの増幅回路としての特性を向上(安定)させ、さらに増幅度を任意に調節可能にする、非常に重要な概念である。
(1)式において、α(トランジスタ T1の電流増幅度) が I1 によらない定数であれば、OPアンプの増幅度 A も定数となる事が分る。 差動増幅回路の用途を考えれば、A
は定数であるのが好ましい。
しかしながら、現実のトランジスタにおいては、エミッタ接地の入力−出力電流特性を完全に線形化することは困難であり、広い範囲で見た場合、両者の間に単純な比例関係は成り立たない。
従って A も入出力電圧に対して変化する。図3は以前実験によって測定した741型汎用OPアンプ単体の入力電位差-出力電圧グラフである。
【図3】

▲OPアンプ単体の出力特性は, 電源電圧に漸近する非線形なものである
図3の通り、測定に用いたOPアンプの出力電圧は入力電位差に関して非線形であり、電源電圧に漸近するカーブを描いていた。この結果から、OPアンプ単体の増幅度は線形性に欠けると言えるであろう。
さらに、トランジスタは半導体製品であるから、増幅度は温度によってかなり変化する。これは避けられない宿命であり、OPアンプの増幅度は使用環境に対して不安定であると言える。
これらの問題を解決するのがネガティブ・フィードバック(負帰還抵抗)である。 フィードバックとは、OPアンプの反転入力端子と出力端子の間を抵抗で繋ぐ事、または繋ぐ抵抗そのものを指す。(前者は「フィードバックをかける」と言う)
ネガティブ・フィードバックを設けた増幅回路は反転増幅回路と呼ばれる。(回路図は図4に示す通り)
(なお、OPアンプの反転入力端子とは増幅電圧を入力電圧と逆位相で出力させる入力端子の事である。
図1・図2で説明した、トランジスタ反転増幅回路の入力端子には反転・非反転の区別は無い。)
【図4】

▲反転増幅回路の回路図。 抵抗 Rf がネガティブ・フィードバックである。 V+は非反転入力端子の電位(アース電位)、V-は反転入力端子の電位。 Vo は出力端子の電位である。VoからはV-が逆位相で増幅されて出力される。
図4において、中央の三角形はOPアンプの回路記号である。 反転入力端子の電位を
V_ 、非反転入力端子の電位を V+ 、オペアンプの出力電圧を Vo、オペアンプ単体の増幅度を A と置くと、
(2)
が成り立つ。 ここでOPアンプの入力インピーダンスが十分に大きく、OPアンプ自体に電流が殆ど流れない場合、Ri と Rf を流れる電流がほぼ等しくなるから、
(3)
となる。 (2)、(3)式から V- を消去すると

ここでOPアンプ単体の増幅度 A が極めて大きかった場合、左辺の極限は 0 になる。従って反転増幅回路の増幅度を
A' とすると、
(4)
が成り立つ。
ここで注目すべき点として、A' は抵抗値の比であるから定数である事、さらに抵抗の比によって A' を任意に調節可能な事が挙げられる。
前者は、反転増幅回路の出力電圧は入力電圧に対して線形である事を示している。(図5)
【図5】

▲反転増幅回路の入力-出力特性
図5は反転入力回路において Rf = 100[kΩ]、Ri = 51[kΩ] として測定した反転入力回路の入力-出力特性グラフである。 青点は出力端子の電位、赤点は反転入力端子部の電位を表している。図のから見て取れる通り、出力はかなり理想的な線形を保っており、増幅回路の特性として好ましい。 (なお、入力端子部の電位がアース電位にほぼ等しくなる現象はイマジナリー・アースと呼ばれる)
(4)式の近似が成り立つ条件は A >> ( Rf / Ri ) であるから、反転増幅回路においてOPアンプに要求される役割は、極めて大きい増幅度のみである。OPアンプはただ極めて大きい増幅度さえ持っていれば、例え出力特性が非線形であろうと、さらに温度変化に敏感であったとしても、反転増幅回路全体の増幅度には殆ど影響しない。反転増幅回路は常に理想に近い特性を安定して維持し続けるのである。
このような理由から、OPアンプを電圧の増幅用途に用いる場合、大抵フィードバックがかけられる。
単体で用いられる事はあまり無い。